法律入門講座オリジナルテキスト紹介
Kenのテキストはここが違う!
Kenビジネススクールの講師,教材作成スタッフは,一流の大学院で法律学等を研究した方,法律・会計事務所で実務をこなしている方,大手司法試験予備校で教材作成・講師をした経験のある方がほとんどです。
これからの社会は良いか悪いかは抜きにして,変革を受け入れる世の中となるでしょう。とくにビジネス界での動きは,今後ますます加速すると思われます。
そのような社会で必要とされる人材は,暗記中心の画一的な教科書のような人材ではありません。変化する社会のベクトル(方向性)を感じ取り,それにただ流されるのではなく,自分の頭で考え,常に先を読み,あらゆる手段を想定しながら着実に目的を達成し得る人材です。
このような人材になるためには,いわゆる予備校的な暗記中心の試験に合格するだけの勉強法ではなく,基本となる知識を深く理解した上での暗記が大切です。変革の時代だからこそ,基礎学力が重要なのです。もちろん,この基礎学力には考える力,すなわち,法的思考能力(
Thinking like a lawer )が含まれます。
Kenビジネススクールの入門講座テキストは,この法的思考能力を踏まえた基礎学力を身に付けさせることを目的として,入門講座テキストを作成しております。長く講師を務めた経験と,法の体系を理解した学識経験から,初学者にとって,理解しにくい点は図や絵でわかりやすく説明し,法体系を理解する上で欠かせない論点は具体例(判例)・学説の対立に至るまで深く詳細に説明しております。また,随所に確認テストを行い記憶の定着と重要項目の再確認をしてもらいます。
以下のものは,入門講座オリジナルテキストの一部抜粋です。ご興味のある方は,資料請求ともにサンプルDVD希望と明記して下さい。
《事前抑制の理論》(憲法入門129頁)
北方ジャーナルという新聞社が,北海道知事選挙に出馬した者Aさんについて,その名誉を毀損する嘘っぱちの内容の記事を書いた。Aはこの情報を伝え聞き,この記事が公表されたら知事選挙の当選は難しく政治生命も断たれる危険もあったので,裁判所に対して出版の差し止めを申し立てた。もしあなたがこの事件を担当する地裁の裁判官だった場合,出版差し止めの命令を下しますか。表現の自由との兼ね合いを考慮に入れて考えてみましょう。 |
表現行為がなされるに先立ち,公権力が何らかの方法でこれを抑制すること,および実質的にこれと同視できるような影響を表現行為に及ぼす規制方法は原則として排除されるべきであるとする理論を,事前抑制の理論といいます。
簡単に言えば,発言自体を禁止してしまうという規制は,表現の自由の根本を揺るがすものなので原則禁止しましょうというものです。
そもそも思想はともかくおおやけ公にされるべきで,公の場において意見を戦わせてはじめて,より正義や真理に近づくという考え方があります。ちなみに,このような場を,表現の自由市場と言ったりします。事前抑制は表現行為をこの思想の自由市場で発表すること自体を拒んでしまうので,表現の自由の規制としてはとてもおおきな制約ということになります。
また,このような規制の場合,規制を受けた側が裁判所に訴えて,主張内容を立証しなければなりません。それに対して,表現した後に法律で規制される(刑罰法規に該当するので罰するなど)場合は,検察官(国側)が原告として主張する内容を証明する責任があります。この点からも表現行為の事前抑制はとてもおおきな制約だということがいえます。
ですから,このような規制は原則として禁止されるのです。
この理論のひとつのあらわれとして検閲というものがあります。日本国憲法において検閲は禁止されています。これは絶対的な禁止とされています。
ですから,裁判所の事前差し止め行為が検閲であるということになると,憲法に違反するということになってしまいます。そこで,判例は検閲の定義を狭く解釈することによって,裁判所の事前差し止め行為を合憲にもっていくという理屈を作っています。
つまり,判例は,「行政権が主体となって,思想内容などの表現物を対象とし,その全部または一部の発表の禁止を目的として,対象とされる一定の行為の表現物につき網羅的一般的に,発表前にその内容を審査した上,不適当と認めるものの発表を禁止すること」が検閲であるとしています(税関検査合憲判決,最大判昭和59年12月12日)。
ポイントは「行政権」というところです。この検閲にあたる行為を憲法は絶対的に禁止しているとするのです。ですから,裁判所という司法権が行う事前差し止めなどは憲法21条2項にいう「検閲」にはあたらないので,絶対的に禁止されていないとするのです。
では,裁判所の行う表現行為の事前抑制は無制限に行えるのでしょうか。
もちろん行えません。厳格な要件が必要となります。最高裁は北方ジャーナル事件で次の要件を判決の中で明示しました。
1 表現内容が真実でないこと
2 表現行為が専ら公益を図る目的でないことが明白であること
3 被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあること
4 原則として,表現行為を制限される側に反論(主張・立証)の機会が与えられること(1〜3の要件充足の蓋然性があり,急を要するときは例外として,この手続要件は要求されない)
の実体要件と手続要件が備わっていることが,事前抑制が例外的に許される条件であるとしました。
《譲渡担保の法的性質D》(民法入門332頁)
Bは某大手広告代理店を脱サラして,個人で広告代理店を営んでいた。
取引先も増え,これまで印刷については外注の業者にお願いしていたが,出版での収益も見込めると判断したBは,最新型の印刷製本機(3,000万円)の購入を決めた。
しかし,それを購入したことで運転資金に不足を生じ,知人Aからの融資を依頼した。Bには不動産などの資産がないので,当該印刷機械を譲渡担保として1,000万円の融資を得た。
その後,Bは順調に収益を上げて,期日に全額弁済をした。
しかし,知人Aはお金に困っており,あろうことか弁済後に印刷機械をDに売却した。
Bは,Dに印刷機械を引き渡さなければならないのでしょうか。 |
これはとんでもない事案ですが,とんでもない事案が起こるから法律家の仕事があります。
所有権的構成の場合は,被担保債権を債務者が弁済したのですから,本来その所有権は設定者のもとに戻ってくるはずです。にもかかわらず,譲渡担保権者がそれを第三者に譲渡したのですから,ちょうど譲渡担保権者を起点とした二重譲渡の関係になります。ですから,第三者が背信的悪意者などでない限り,設定者は所有権を第三者に対抗できません。
担保的構成の場合は,譲渡担保権者は所有権を有しないので,譲受人は192条(即時取得),94条2項類推適用などによらない限りは所有権を取得することはできません。
(5)延焼罪(111条) (刑法入門265頁)
本罪は,自己所有物件に対する放火罪を犯して,他人所有の物件に延焼した場合を重く処罰する結果的加重犯です。
延焼とは,行為者が予期しなかった物に燃え移って,これを焼損することです。もちろん,基本となる犯罪と延焼結果との間には因果関係がなければなりません。
「〜の罪を犯し」とは,基本犯が成立したことを意味します。したがって,109条2項,110条の客体に放火したときは,そこで公共の危険を生じさせた上で延焼するのでなければ本罪は成立しません。



《延焼と適用条文》
| Aは,引越しで不要となった自己所有の家財道具を処分するために庭に積み上げこれに火を放ったところ,折からの風にあおられて家財道具は勢いよく燃え上がり,その火力によって隣の不燃性耐火構造のマンションの側壁が崩落した。Aは何罪に問われるか。 |
まず,放火の客体を明らかにしましょう。本件での放火の客体は自己所有の家財道具,つまり自己所有の建造物以外です。刑法110条2項が適用される場面です。この適用については,前述したとおり,「公共の危険の発生」の認識の要否が論点となっていました。また,客観的構成要件要素として,公共の危険の発生が必要となりますが,本件のように隣家に延焼していることから,公共の危険が発生していることは疑うことはできません。
つぎに,延焼の客体を明らかにしましょう。本件での延焼の客体は不燃性耐火構造のマンションです。もちろん,幽霊マンションのように誰も住んでいないところもあるでしょうが,ここは普通に考えて,マンションしかも不燃性耐火構造という最新の構造なのですから,現住建造物と判断するのが普通の思考回路でしょう。つまり,108条の建物に延焼させたということです。ということは,
110条2項→108条→111条1項→3月以上10年以下の懲役,という流れになります。
ただ本件は,延焼の客体であるマンションが延焼によって焼損したかどうかについては,前述したとおり,争いがあります。つまり,放火罪の既遂時期の判定です。
私見ですが,昔ながらの木造建築でも側壁が崩落する程度まで燃え上がるのは,ほぼ全焼するくらいの段階でしょう。不燃性耐火構造のマンションという特性によって,燃焼は起こらなかったという結果論で,延焼を認めず,110条2項のみで処罰するのは妥当な結果とは思われません。結果だけではなく行為の過程についても違法かどうかの判断材料にいれるのが刑法ならば(行為無価値論),結果オーライの理論は避けるべきだと思います。
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