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権利関係4回目
代 理


1 代理制度とは

(1)代理とは

代理制度 代理とは,ある人のした意思表示の効果が直接他の人に帰属する法律制度をいいます。
 例えば,下図の例のように,Aさんが所有している土地付き建物を売り渡すことをBさんにお願いして,お願いされたBさんがAさんに頼まれた範囲でCと売買契約を結び,AさんがCさんに土地付き建物を引き渡し,CさんがAさんにその代金を支払うといった場合です。
 この場合,売るという意思表示をする者が代理人(B)で,効果の帰属者を本人(A)と呼び,買主であるCを相手方または第三者と呼ぶことが多いです。
 現在では,この代理という制度は,当たり前のように思われます。不動産などを売る場合,不動産屋(宅建業者)に依頼するのが普通です。自分で買主をみつけて,契約まで済ますということは,相当法律に詳しい人でない限り,また時間がありあまっている人でない限り,しないでしょう。
 しかし,法律上は,実はこの代理という制度は例外なのです。
 法律上は,契約などの法律行為をした者が自らそこから生ずる権利を得て,義務を負うのが,原則です。それが私的自治の原則でもあります。
 しかし,今日において代理は,非常に広く行われており,それなしには社会生活が成り立たなくなっています。
 代理が必要となるのは,次の3つの場合です。
 第一に,制限能力者の場合です。一人では有効に法律行為(契約など)を行えない者である制限能力者の場合は,代わってやってやるということが当然必要になります。
 第二に,法人の場合です。法人それ自体には,頭脳もなければ手も足も口も目もないので,自らが契約などの法律行為はできない。そこで代わりに行える理事などの代表機関が必要となるのです。代理権授与行為
 第三に,任意代理と呼ばれるものです。現代社会は,経済中心の社会です。良いか悪いかは抜きにして,個人商店が街並を飾ることはなくなりつつあります。大資本の大手企業がひしめき合って競争する社会が現代社会です。その中で一人の人間ができる経済活動はたかが知れています。やはり大勢の人が集まり,分業化して,営業を行う方が得策であり不可欠でしょう。このような場合に,代理という制度は非常に役に立つことがわかります。また,そこまで行かなくても,病気をしたり旅行する場合にも代理は有用です。
 これらの社会的必要性が代理という制度を法律上認めることをうなが促しました。
 因みに,第一の要請から認められたものが「法定代理」であり,第二の場合が「代表」であり,第三の場合が「任意代理」です。

(2)代理の要件

 代理の中心の問題は,どのような場合に,代理人のした行為の効果が,代理人ではなく本人に帰属するのか,ということです。
 厳密に言えば,誰のした,どのような範囲の,どういう形式でなされた法律行為によって,本人にその法律効果が帰属するのか,という問題です。
 一般には,代理権の存在顕名法律行為(代理行為)の3つがそな備われば,代理人と相手方との法律行為の効果(債権的効果と物権的効果)が本人に帰属するとされています。その他,取消権や解除権なども本人に帰属することになります。


2 代理行為のトラブル代理行為の瑕疵

 代理人が相手方に騙されて契約した場合や,錯誤した場合,誰が取消や無効を主張できるのでしょうか。
 現実に契約をするにあたって意思表示をするのは代理人です。ですから意思表示の瑕疵・欠缺,善意・悪意などは,代理人について判断します。意思表示は代理人,効果は本人というのが代理の基本です。ですから,詐欺なのかどうかは代理人と相手方で判断し,詐欺の要件にあてはまる場合は,本人が相手方に対し,または相手方が本人に対して取消を主張することになります。


3 代理人の能力

 だれでも代理人になれるのでしょうか。代理人の資格
 代理人は前に勉強した制限能力者(未成年者など)でもよいということになっています(民法102条)。ですから,本人は代理人が制限能力者だからという理由で,代理人の行った契約などを取り消すことはできません。また,代理人の行った契約などの効果は,すべて本人に帰属するので,代理人に不利益が生ずることもありません。本人があえて能力の劣る者を代理人に選んで,本人自身が不利益をこうむるんだから,自業自得ということです。

 少し応用 本人が悪意の場合
 特定の法律行為をすることを委託した場合(例「Cの所有する建物を買ってきてほしい」)には,代理人が詐欺されていたことについて悪意または有過失の本人は,詐欺による取消を主張できない。


4 代理権の発生消滅

 では,人はどのようにして代理人になるのでしょうか。
 代理には,法定代理と任意代理があります。
 法定代理の場合,本人と一定の関係にある者が法律上当然に代理人になる場合(たとえば,未成年者の父母など),一定の者の協議または指定によって代理人に選ばれる場合(父母の協議による親権者など),裁判所によって選任される場合(後見人など)などがあります。
 任意代理の場合,代理権は,本人の代理権を与える行為(代理権授与行為と呼ぶことがあります)によって発生します。通常は,委任契約や雇用契約,請負契約,組合契約などに伴って行われます。
 
 次に,代理人はいつまで代理人なのでしょうか。
 任意代理のキーワードは,信頼関係です。つまり,信頼関係がなくなるような事情が発生した場合は,代理権は消滅します。どのような場合に代理権が消滅するのかといえば,本人が死亡した場合や代理人が死亡した場合などです。本人の地位や代理人の地位は相続しないということです。

〈代理権の消滅原因〉

 

死亡

破産

後見開始

解約告知

任意代理

本人

111)

653)

×

651)

代理人

111)

111)

111)

651)

法定代理

本人

111)

×

×

×

代理人

111)

111)

111)


ちょっと付け足し<代理権の範囲を定めなかった場合>
 法定代理の場合は,それぞれ異なります。親権者は包括的な代理権をもっています(民法824条本文)。じゃっかん若干の行為について制限があるだけです(民法824条但書,826条)。たとえば,親権者が子の相続分を放棄することなどはりえきそう利益相はんこうい反行為として無権代理になります。
 任意代理の場合は,代理権授与行為の解釈の問題です。たとえば,本人が土地を1億円以上で売却する権限を代理人に与えた場合,代理権の範囲は土地売買を一億円以上でなすことになります。仮に,権限を越えて契約を結んだ場合(たとえば8,000万円で売ってしまった場合など)は,後に勉強する表見代理などの問題が生じます。

 代理権の範囲が不明な場合はどうなるのか
 代理権はあるがその範囲が不明である場合につき,民法は補充規定を設けています(103条)。たとえば,旅行をするとき妻に後事を任せる場合などがその例です。以下の3つについて代理権があるとされています。
@保存行為…財産の現状を維持する行為
 ex. 家屋の修繕,消滅時効の中断,未登記不動産の保存登記
A利用行為…収益を図る行為
 ex. 現金を銀行預金にする,物の賃貸
  ※ 現金を株式,使用貸借は利用行為ではない。
B改良行為…財産的価値(使用価値,交換価値)を増加させる行為
 ex. 家屋に電気・ガス・水道などの設備を施す,無利息の貸金を利息付に改める


5 無権代理無権代理

 代理人によって代理行為がなされたにもかかわらず,代理権がない場合を無権代理といいます。代理人による代理行為がなされたというのは,顕名があったということです。もし顕名もなく代理権もなければ,たんに他人の(Aさんの)建物を勝手に売った(他人物売買といいます)というだけになります。あくまでも,A代理人Bという名前で,権限もないのに相手方Cに建物を売ってしまったりする場合を無権代理とよびます。
 無権代理の効果は,本人に効果帰属しないことです。
 無権代理の場合には,本人の側からは追認をしたり追認拒絶をしたりすることができます(113条)。また,相手方は,本人に対して無権代理行為を追認するのかしないのか催告をしたり(114条),または本人が追認する前は当該無権代理の契約を取り消したり(115条),さらには無権代理人に損害賠償や履行請求などの責任をしたり(117条),本人に対して表見代理責任を追及したりすることができます(110条など)。

無権代理人の相手方保護の制度
(1)無権代理行為の相手方は,無権代理について悪意であっても,相当の期間内に無権代理行為を追認するか否かを確答すべき旨を本人に催告することができる。その期間内に本人が確答しないときは追認を拒絶したものとみなす。
(2)無権代理行為の相手方は,無権代理について善意である場合には,本人の追認がない間は,無権代理人が結んだ契約を取り消すことができる。
(3)本人が無権代理行為を追認しない場合には,無権代理であるということについて善意かつ無過失の相手方は,原則として,無権代理人に対し,履行または損害賠償の請求をすることができる。
(4)与えられた代理権の範囲を越えた場合や,代理権が消滅した場合でも,相手方が善意無過失であれば,表見代理が成立する。


5 復代理

 代理人がさらに代理人を選任することはできるのでしょうか。
 代理人が本人の代理人を選ぶことができなければ,ちょっと不便なことがおきます。たとえば,訴訟をお願いされた代理人が法廷のある日に急に病気になった場合などが考えられます。しかし,だからといって司法試験に合格したての新米弁護士が勝手に代理人として訴訟を進めるのは,本人がこの弁護士だからこそお願いしたという信頼を裏切ることにもなります。そこで,民法は,先ほど示した法定代理と任意代理とに分けて,各々一定の場合に限って代理人が本人の代理人を選ぶことを認めています(復任権といいます)。これを復代理人といいます。
 任意代理の場合は,本人の信頼を受けて代理人とされたのだから,復代理人を選任できる場合は限られています。本人がそれを許した場合とやむを得ない事情がある場合の2つです(民法104条)。
 法定代理の場合は,代理人の意思にかかわりなく,また多くの場合本人の意思にもよらずに選ばれるものだから,広く復代理人を選任する権限が認められています。

少し応用 復代理人の法律関係
1.「復代理人」は,代理人の代理人ではなく,本人の代理人である。したがって,本人の代理人であることの顕名が必要であり,また復代理人の行為の効果は,直接本人に生じる。
2.復代理人の代理権の範囲は,代理人の代理権の範囲を越えることができない。
3.代理人の代理権が消滅すれば,復代理人の代理権も消滅する。
4.復代理人を選任しても,代理人の代理権は消滅しない。


 代理は,実社会ではよく行われていることです。そして,法律など知らなくてもほとんどの場合何の問題も起こらずに事が運びます。代理についてその法的な理論を知らなくても十分代理という制度を利用できるということです。冷蔵庫の機能について物理的に説明できなくても使うことができるのと似ていますね。
 法律家は,人と人とのもめごとがあった場合に,その修復と予防を法律の知識を利用して行う専門家です。病気を治し予防するのが医者であるならば,人と人との紛争を解決し予防するのが法律家といったところでしょう。
 前置きはこれくらいにして,代理,ということですが,法的な理屈はとてもとても宅建試験のレベルでは語りきれない深さと広さを持っています。意見が分かれるような事案にあっては,この本質論を知らずして微妙な解釈はできません。つまり,代理人のなす代理行為とは,本人の行為であるとして理論を構成するのか,代理人の行為であるとして理論を構成するのか,で学説上の対立があるのです(本人行為説・代理人行為説)。通説は,代理人行為説なので,資格試験では「あくまでも代理人が主体となって法律行為を行うのだ!」と覚えておけば問題ありません。ただ,「本人のために法律行為を行うという意思とその表示(顕名)があることを要件に,法律行為の効果だけが本人に帰属するんだ!」という驚きの理屈を打ち立てて行くわけです。
 代理人が法律行為を行うってところが重要ですよ!「ここアンダーライン」と講義の中で必ず言うでしょうね,私なら。そして,法律行為の要素(欠いてはならない事項)として,すでに勉強した意思表示があるのです。だから,代理人の意思表示に瑕疵などがあった場合は,代理行為自体に瑕疵が生じ,取消などの効果が本人に帰属するという理論が成り立つのです。
 基礎工事に手抜きがあれば,いくら内装工事に力とお金をかけても,ちょっとした地震で倒壊します。それと同様に,代理についても,上記の基礎理論がしっかりと頭に入っていなければ,ちょっと複雑な事件があった場合,お手上げ〜となってしまいます。しっかりと,代理の基礎を理解しておきましょう。



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