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「法の下の平等」

NPO法人全国生涯学習支援協会
Kenビジネススクール
代表理事 田中謙次


1.ポイント整理

 憲法における平等の意味は,とても深く難しい概念のひとつである。平等の意味を知ることは,「正義」の意味を知ることでもある。腰を据えてしっかり学ぶ覚悟が必要であろう。
 私見ではあるが,平等を考える上で,@近代革命を契機とする歴史的な意義と,A肌の色や能力などの生理的意義の2つの方向から考察するとわかり易いと思われる。
 近代革命を契機とする歴史的意義とは,中世での身分制社会を打破し市民平等による社会への変革を意味します。民法の世界では「身分から契約へ」などという標語によって表現されることもある。この平等観は,「誰でも能力があればどのような職業にもつくことができる」という機会の平等という観念に到達する。だれでもチャンスが平等に与えられているという意味である。この修正形態として,結果の平等という観念が生まれてくるのである。
 生理的意義とは,人間はそもそも平等には生まれてこないという意味である。肌の色,身長,目の色など,人はひとりとして同じ存在ではなく違った個性をもった存在である。つまり,人は生まれながらにして不平等なのである。だからこそ,もって生まれた資質によって差別してはいけないという規範が生ずるのである。この平等観は,自分の力では如何ともし難い資質によって差別してはいけないという憲法14条の列挙事由の意味に直結する。14条1項に記されている列挙事由は,本人の力では変えられない資質を意味するというのが通説であり,そう解することによって,例示列挙説を導くことが可能になる。
 これら2方向から(2つの趣旨から),合理的な差別として許されるラインを考えればよいのである。つまり,2つの趣旨に反しないように,実質的に解釈して形式的平等観に修正を加えればよいのである。


2.序論

憲法14条
  1. すべて国民は,法の下に平等であつて,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない。
  2. 華族その他の貴族の制度は,これを認めない。
  3. 栄誉,勲章その他の栄典の授与は,いかなる特権も伴はない。栄典の授与は,現にこれを有し,又は将来これを受ける者の一代に限り,その効力を有する。
 本条は,その1項で,平等原則を一般に定めている。さらに,平等原則を具体化した制度として,貴族制度の禁止をその2項で,栄典に伴う特権の禁止をその3項で規定している。

(1)平等思想の展開

 人間平等の思想は,中世における「神の前の平等」思想にもみられる。これに対して,国家による平等な取扱いを要請する現実社会においての平等原則は,近代の合理主義的自然法思想において確立され,アメリカ独立宣言やフランス人権宣言の中で宣言された。
 やがて,人間の生来の平等という理念は,「法の前の平等」あるいは「法の下の平等」という規定として,各国の憲法の中に憲法規範として定着していく。近代の平等観は,形式的平等(人の現実の様々な差異を一切捨象し原則的に一律平等に取り扱うこと,機会の均等)を要求する。
 しかし,自由競争への公平な参加という形式的平等の保障のもと,経済的自由競争が行われるようになると,競争力自体に差がついて行き,むしろ不平等状態は拡大される結果となった。
 そこで,20世紀の現代国家の多くは,福祉国家ないし社会国家の理念を掲げ,社会的・経済的弱者に対してより厚く保護を与え,それによって他の国民と同等の自由と生存を保障することを目指すようになった。
 現代の平等観は,形式的平等と同時に,実質的平等(人の現実の差異に着目してその格差是正を行うこと,結果の均等)を保障しようとする。
 形式的平等の要求は自由の観念と両立しうるものであるが,実質的平等の要求は自由によってもたらされた不公正を是正すべきとの要求であるから,自由の観念と究極的には両立しないものであり,また形式的平等との間にも矛盾を来たすという問題がある。
 したがって,同一次元上で,双方の要求を同時に満たすことは困難である。
 また,違憲審査権の行使にあたり,形式的平等については,厳格な審査が馴染むのに対し,実質的平等については,立法目的・立法目的達成手段の両面から,厳格な合理性の基準により審査がなされるべきであるとされる。
 例えば,入学試験や雇用などにつき一定の社会的弱者に優先枠を設けることは,実質的平等の要請にはかなうが,機会の平等という形式的平等の要請には反する。また,黒人と白人を別の学校へ入れることは,就学の機会の平等という形式的平等の要請にはかなうが,実質的平等の要請には反することになる。
 因みに,アメリカでは,歴史的に差別を受けてきたグループ(黒人・女性など)に対し,優先的な処遇を与える積極的差別解消措置が立法などを通じて進められてきた。これは一般的には是認されるが,行き過ぎると逆差別の問題が生じる。


3.日本国憲法14条における「法の下」の「平等」

(1)「法の下」の平等の意味

 14条1項は法適用の平等のみを意味するか,それとも法内容の平等までをも意味するか。すなわち,14条1項が立法者を拘束するかが,「法の下」の解釈と関連して問題となる。この点についての学説を整理してみよう。
 まず,立法者拘束説という見解がある。これは,法適用の平等のみならず,法内容の平等をも意味する,とする。その根拠は,@法の内容自体に不平等があればそれを平等に適用しても意味がないこと,A「法の下の平等」にいう「法」は,狭い意味の法律ではなく,憲法を含む広い意味での法を指すとみることもできることが挙げられている。
 この立法者非拘束説によれば,後段列挙事由以外の事由に基づく差別が法律に定められても14条違反(法令違憲)の問題は一切生じないことになるが,それは妥当でないと思われる。
 次に,立法者非拘束説が主張される。すなわち,法の下の平等とは,法適用の平等を意味し法内容の平等を意味しないとする。この説であっても,1項後段の差別の禁止は立法者をも拘束するとする。その根拠としては,@一般的な平等原則の妥当領域を限定する代わりに,憲法の要請する平等を絶対的平等と解することにより,平等の意味を一義的に捉えることができること,A立法者拘束説に立ち,「平等」を相対的平等と捉えた場合,合理的差別と不合理な差別を区別する判断基準が不明確になること,が挙げられている。

(2)法の下の「平等」の意味

  1. 形式的平等と実質的平等:前述の通り,14条には,形式的平等と実質的平等の両方の要請が含まれてはいるが,形式的平等を保障したものと解すべきであろう。実質的平等の要請は相対的限度でみたされるべきものである。というのは,実質的平等の要求と形式的平等の要求は同一次元上で同時にみたすことが困難なものであるから,このように解さなければ,形式的平等の要求が不明確な内容の要求によって相対化され,かえって無内容なものとなる危険があるからである。
  2. 相対的平等と絶対的平等:現実に存在する様々な事実上の差異を無視して,すべての者を機械的に均一に扱うこと(絶対的平等)は,かえって不合理ないし非現実的な結果をもたらす。そこで通説は,事実上の差異に着目して,平等原則は,等しいものは等しく,等しくないものは等しくなく取り扱うべきだという相対的平等の意味に理解している。つまり,不合理な差別的取扱いのみを禁止するとする。

(3)個別的差別禁止事由(1項後段)

 14条1項後段は,「人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的,又は社会的関係において,差別されない」として,個別的な差別禁止事由を列挙している(後段列挙事由)。この後段列挙事由は,いずれも歴史的に存在した不合理な差別事由といえるが,この列挙の意味をいかに解するかについて学説上争いがある。
 まず,限定列挙説という見解がある。これは,後段は差別事由の限定列挙であるとする。立法者非拘束説・絶対的平等説の帰結ともいえよう。ただこの見解に対しては,@平等の内容は社会の展開の過程で変容するものであるから,立法上の差別禁止事項を全く限定的に解することは適用ではない,また限定列挙説・絶対的平等説をとると,今日一般に支持されている女性の労働保護規定などが説明困難になるとの批判がある。
 次に,例示列挙説という見解がある。これは,14条1項後段事由は,不合理な差別の例示ではなく,単なる差別事由の例示であるとする見解である(判例)。その根拠は,14条1項後段の規定には各別の存在意義がみとめられないからである。
 さらに,同じく例示列挙とする見解で判例と異なるものもある。つまり,14条1項後段は,前段の重要な場合を具体的に列挙したものである,とするものである。その根拠は,@後段列挙事由のうち,人種,性別,社会的身分,門地は(社会的身分については争いがあるも)人の出生により決められる条件であるが,このような出生による差別を認めないことこそが平等思想の根源であり民主政の一つの核心といえること,A信条は,民主政の基本に関わる価値であるから,絶対的な保障を受けるべきものといえること,などの主張がされている。
 さらに,14条1項後段は,不合理な差別事由の代表的なものを列挙したものであってそれらを理由とする差別は原則として法の下の平等に反するという意味で特に列挙したものであるとする見解や,14条1項後段は,民主政のもとでは本来許されない不合理な差別を列挙したものであり,合憲とする側が合理的差別であることの挙証責任を負うという意味で特に列挙したものであるとする見解もある。

(4)個別的差別禁止事項の意味

  1. 「人種」:人種とは,皮膚,毛髪,目,体型等の身体的特徴によって区別される人類学上の種類をいう。因みに,外国人に対する取扱いの区別(外国人登録法など)は,国籍の有無を基準とする憲法上の人権享有主体の問題だから,「人種」による差別ではない(判例)。
  2. 「信条」:信条は,宗教や信仰のみならず,思想・世界観等を含むとするのが通説である。因みに,労働基準法3条は,私企業において使用者が労働者に対し,信条を理由として差別的な取扱いをすることを禁じている(三菱樹脂事件:最大判昭48年12月12日レッドパージ事件:最判昭30年11月22日)。
  3. 「性別」:歴史的にみて,専ら女性が不合理な差別を受けてきたことから,男女差別の禁止は,主に女性に対する不合理な差別の禁止を意味する。もっとも,男女には肉体的・生理的な条件の違いがあり,そのため女性を保護するための合理的な区別は認められるとされる。例えば,強姦罪の法定(刑法177条)や,坑内労働の制限(労基法64条の2),妊産婦等にかかる危険有害業務の就業制限(労基法64条の3)などがある。判例としては,日産自動車事件(最判昭56年3月24日),住友セメント事件(東京地判昭41年12月20日),岩手銀行事件(仙台高判平4年1月10日),女子の再婚禁止期間(最判平7年12月5日),強姦罪の合憲性(最判昭28年6月24日),女児の逸失利益の算定方法と平等原則(福岡高判平13年3月7日),男女賃金不平等(東京高判平13年8月20日)などがある。
  4. 「社会的身分」:社会的身分とは,一般に人が社会において占めている地位をいう。このうち差別禁止事由にあたる「社会的身分」とはどのようなものかについては学説上争いがある。
     出生によって決定され事故の意思で変えられない社会的な地位をいうとする見解,社会において後天的に占める地位で一定の社会的評価を伴うものをいうとする見解,広く社会においてある程度継続的に占めている地位をいう見解などが主張されている。
     ただ,後段列挙事由を単なる例示であると捉える例示列挙説(判例)からは,「社会的身分」の意義を論じる意味はあまりないといえよう。
     この点についての判例として,非嫡出子相続分規定事件(最大判平7年7月5日),レペタ事件(最大判平元年3月8日),在日韓国人障害年金請求事件(最判平13年4月5日),小選挙区制と選挙制度(東京高判平13年4月25日)などがある。
  5. 「門地」: 門地とは,家系・血統などの家柄をいう。明治憲法下での華族・士族・平民等は「門地」による差別であり,このような制度の復活は許されないとされる。なお,帰属制度の採用も「門地」による差別にあたることになるが,14条2項で別に明示的に禁止されている。

(5)後段列挙事由以外の事由に基づく不平等

  1. 議員定数不均衡
     憲法が投票価値の平等を保障していることについては,判例・学説上の争いはない。しかし,たとえ平等であるとしても,議員定数の配分と人口数(もしくは有権者数)との比率を各選挙区でまったく同一にすることは現実には困難である。そこで,いかなる基準で投票価値の平等が満たされているかを判断すべきかが問題となる(なお,定数不均衡は,選挙無効の訴え(公職選挙法203条,204条)によって争うことができる)。

     《衆議院の場合》
     1対1の原則を超える限り,たとえ1対2であっても,これを正当化する特別の事由が立証されない限り,違憲の問題を生じるとする見解がある。その理由は,選挙権の法的性質について権利説を前提にして,主権者間の権利の平等を厳格に要求することによって,主権者の意見を議会に忠実に反映させることができるからであるとする。
     それに対して,特段の事情のない限り,1対2以上の格差は正当化されないとする見解が通説である。その理由は,@一票の重みが特別の合理的な根拠もなく選挙区域で2倍以上の偏差をもつと実質的複数投票製を認めたことになり,投票価値の平等(1人1票の原則)の本質を破壊することになること,Aただ他方で,選挙区は行政区画を前提にして決められていること,また,選挙によってできるだけだ多様な国民意思が公正に国会に反映されるべきであること(社会学的意味の代表)をも考慮しなければならないとする。

    判例

    最大格差

    投票価値の平等に反するか

    合理的期間内に定数是正がなされたか

    備考

    最大判昭51年4月14日

    1:5

    反する

    なされなかった

    事情判決の法理を用いて選挙自体は有効

    最大判昭和58年11月7

    1:3.94

    反する

    なされなかったとは断定できない

     

    最大判昭60年7月17日

    1:4.40

    反する

    なされなかった

    事情判決の法理を使用

    最判昭63年10月21日

    1:2.92

    反しない

     

     

    最大判平5年1月20

    1:3.18

    反する

    なされなかったとは断定できない

     

    最判平7年6月8

    1:2.82

    反しない

     

     


     《参議院の場合》
     一般的には1対1ないし1対2を投票価値の平等の違憲審査基準と解したとしても,参議院の場合でも同様に解すべきかについては争いがある。
     参議院の特殊性を考慮する見解がある。参議院の場合については,都道府県ないしそれより大きな政治単位(将来の州制化を想定して)における国民の意見や利害を均等に反映させるように構成することも可能とする。その理由は,@日本国憲法が二院制を採用していることを考慮するならば,平等原則は,総体的な代表選出制度の中で実現されるべき課題というべきであること,A半数改選が憲法上の原則であるから,それに付随して,その定数配分は衆議院の場合とは異なる人口比率の偏差があり得ることが挙げられている。
     それに対して,原則として参議院の特殊性を考慮しないとする見解もある。真にやむを得ない合理的な理由の存する限りにおいて衆議院の場合よりも若干の緩和が認められるにとどまるとする(通説)。その理由は,@憲法が参議院の選挙制度について要求しているのは半数改選制にとどまるから,地方区を選挙区とする議員の地域代表的性格を協調して,民主制の根幹をなす選挙権の平等という憲法原則を大きく傷つけるようなことがあってはならないこと,A半数改選制を運用するうえで定数配分が人口比例原則から著しく乖離する状態になり,その是正がもし現行法制のままでは不可能に近いとすれば,投票価値の平等を生かすために,むしろ選挙制度の改正を検討すべきであることが挙げられてる。
     最高裁判所は参議院の半数改選制や地域代表的性格といった特殊性を考慮して衆議院の場合よりも大きな格差を許容している。

    判 例

    最大格差

    投票価値の平等に反するか

    合理的期間内に定数是正がなされたか

    備考

    最大判昭39年2月5

    1:4

    反しない

     

    立法政策の当否の問題とした

    最大判昭58年4月27

    1:5.26

    反する

     

     

    最大判平8年9月11

    1:6.59

    反する

    なされなかったとは断定できない

    投票価値の平等の要求は,人口比例主義を基本とする選挙制度の場合と比較して一定の譲歩,後退を免れないと解さざるを得ない,とした。

    最判平10年9月2日

    1:4.81

    反しない

     

     

    最大判平12年9月6

    1:4.98

    反しない

     

     

  2. 地域的取扱いの不平等
     地域の自治体は,それぞれに法令の範囲内において自主立法たる条例を制定する権限を有する。これは地域の実情に合わせて自治体ごとに異なる規制がなされることを当然に予想した制度といえるから,地域的取扱いの差異は平等原則違反とならない(判例)。
  3. 所得税の不平等
     旧所得税法の給与所得課税は,必要経費の実額控除を認めず,源泉徴収制度により所得の捕捉率が高い点で,事業所得者等と比べ給与所得者に不公平な税負担を課しているとして,14条の平等原則に反しないか争われた。これに対して最高裁は,租税法の定立は,立法府の政策的・技術的な判断に委ねるほかはないことからすれば「立法目的が正当なものであり,かつ,当該立法において具体的に採用された区別の態様が右目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り,その合理性を否定することができず」違憲とはいえないと判示した(サラリーマン税金訴訟:最大判昭和60年3月27日)。


4.平等原理と平等権との関係

(1)平等原則と平等権

 「法の下の平等」とは,国家が国民を不合理に差別してはならないという原則(平等原則)を規定したものである。すなわち,国政全般を直接拘束する客観的原理であるといえよう。
 また,個々の国民に対しては,法的に平等に扱われる権利ないし不合理な差別をされない権利(平等権)を保障している。具体的には,裁判において救済を求めることができる権利として実現される。しかし,平等権は他の人権とは異なり常に他者との比較においてのみ問題となるもので相対的な権利であり,それ自体としては無内容ないし無定形の権利である。

(2)違憲主張の範囲

 平等は常に他との比較の中で問題となる性質のものである。すなわち,通常は「平等権」以外の実体的な権利・自由ないし法的利益にかかわって他との区別の合理性が問題となる。そして,平等に取り扱われるべき権利・自由ないし法的利益が不平等に取り扱われたときに14条1項違反となる。すなわち,平等権侵害か平等原則違反かの違いにこだわる必要はない。

(3)違憲判断の方式

 特定の法律条項や具体的処分が平等原則違反と判断された場合,その判断の方式としては以下のようになすべきとされている。
  1. 自由権に関して平等原則違反がある場合
     通常その規定や処分を違憲・無効とすることで差別は解消される。例えば,尊属殺重罰規定が平等原則違反の場合,その規定を違憲・無効とするなどがその例である。
  2. 社会権や国務請求権に関して平等原則違反がある場合
     通常その規定や処分を違憲・無効としたのでは,かえって実質的な救済にならない場合がある。この場合,差別の解消のためには,国による立法措置が必要となる。具体的には,裁判所としては違憲の確認にとどめるべきであり,後は立法府の措置を待つべきであるということになる。例えば,社会保障に関する請求権が,法律上特定のグループについてのみ規定されていない場合などがその例である。

(4)違憲判断の基準

 14条1項の「平等」を相対的平等と解するとき,平等原則違反か否かの判断基準は区別に合理性があるか否かによる。問題は,その合理性を具体的に判断する基準としてはどのようなものが妥当か,ということである。この点に関する通説的見解は,「合理性」を審査する基準は,@差別の事由(人種・信条など)の違いや平等原則とかかある権利の性質の違いに応じて厳格度に差異があること,A立法目的と立法目的達成手段の両側面から合理性の有無を判断する形式のものであること,が必要であるとして,次のように厳格度を3段階に分けるのが妥当であるとしている。

後段列挙事由に基づく別異取扱い

人種

厳格な基準

信条

性別

厳格な合理性の基準

社会的身分

門地

厳格な基準

後段列挙事由以外の事由に基づく別異取扱い

精神的自由ないしそれと関連する権利(選挙権)

厳格な基準

経済的自由

消極目的規制

厳格な合理性の基準

積極目的規制

合理性の基準

 判例においては,一般に「合理性の基準」が採用されており,最高裁判決で法令違憲とされたものは極僅かである(尊属殺重罰規定違憲判決:最大判昭48年4月4日,衆議院議員定数不均衡違憲判決:最大判昭51年4月14日)。


5.貴族制度の禁止と栄典に伴う特権の禁止(2・3項)

(1)貴族制度の禁止

 貴族とは,一般国民から区別された特権を伴う世襲の身分をいう。
 明治憲法下で認められていた華族という特権的身分を廃止し,将来において類似の制度が復活することをも禁止している。

(2)栄典に伴う特権の禁止

 栄典自体も広い意味では一種の特権といえる。よって,栄典が認められる異常,たとえば経済的利益の提供などを伴っても,直ちに違憲とはいえない。違憲か否かは,民主主義の観点からみて合理的な限度内のものか否かによる。例えば,納税義務をすべて免除するような場合は「特権」の付与といえる。また,勲章の授与に際し,国が勲章とあわせて一時金を支給しても「特権」の付与とはいえない。






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