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権利関係12回目
建物区分所有法


1 建物区分所有法とは

 建物区分所有法といわれて、どのようなことが書かれている法律なのか、明確にイメージできる人は少ないでしょう。最近の法律は横文字をつかうことがたまにあるのですが、基本的に法律は日本語で書くことが大原則となっているので、一般的には横文字になっている言葉も日本語で表すことになるので、その文字から中身がイメージしにくいものとなっています。
 この法律を、「マンション法」と言い換えると、中身がパッと思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。そうです、この法律でいう「区分所有建物」とは、みなさんが一般にマンションと呼ぶものです。ちなみに、マンションは和製英語なので、英語圏の国に行ってマンションに住んでいますといっても、正確な意味は伝わりませんよ。英語でマンションと言った場合は、皇帝などが住む豪邸のようなものを意味するので、相手をビックリさせてしまうでしょう。
さて、話を戻しまして、建物区分所有法は、マンションに関する所有の話と、そこに住む人たちとの間の生活のルールについて定めた法律なのです。
 私の講義では、この建物区分所有法の説明は、必ず民法の「共有」の話の後にすることになっています。ちゃんとこれには意味があります。
 マンションと呼ばれるものは、いつ頃から日本に存在し出したのでしょうか?
 何を突然と思われるかもしれませんが、法律を学ぶ上で、このような制度趣旨の話を知っているのといないのとでは、後の理解と記憶に雲泥の差が生まれるので、あなどるなかれ。
 平安時代でしょうか? 鎌倉時代でしょうか?
 という冗談はさておいて、今のような高層マンションが建ち出したのは、日本が高度成長期に入ってからです。すなわち、昭和30年〜40年代という頃です。世界的には冷戦構造の幕開けと代理戦争と呼ばれる東南アジアの小国での独立戦争への大国の介入があちこちで行われるようになった頃です。日本ではその前の朝鮮戦争による軍需景気によって一気に戦後復興を果たし、経済的にも戦後からの脱却と国内産業の活性化が政治経済さらには社会の中心におかれるようになった時代ですね。
 イメージできますか? 景気が高まり企業がどんどん大きくなることで、多くの人が地方から企業が立ち並ぶ都心へ職を求めて移転することになります。狭い都心で多くの労働者が住居を構えることになったのです。こうなると、それまでのように、まるでサザエさんの漫画に出てくるような大きな敷地に庭があり平屋建てで大家族が住むという風景は、都会にあっては大きな迷惑になってきますよね。地方から出てきた多くの労働者も憲法にあるように「文化的で最低限度の生活」が保障されなければならないので、これまであった大きな敷地に縦に伸びるような形で多くの住環境を築く必要がでてくるわけです。これが都心にひしめき合うマンションです。
 すなわち、このような経済事情によって、高度成長期に多くマンションが出現したのです。
問題なのは、そのマンションに関する所有権などの物に対する権利をどうするのか、また一つのマンションという建物を複数の住人(所有者)で共同所有する場合の住人同士の取り決めをどうするかです。
 もちろん、民法という法律には、所有権などの物権に関するルールも、一つの物を複数の人たちで持ち合う(共有)するルールも定められています。
 しかし、この民法が日本に入ったのは明治時代ですし、その土台ができたのはフランス革命後という、おそろしく昔にできた法律なのです。
つまり、民法という法律をつくったときには、今のような経済事情さらにはマンションという高層住宅などは想定の範囲外だったわけです。
 民法についての共有のルールを思い出してみましょう。講義の中でよく私が申し上げている通り、民法は共有という概念を嫌っています。「共有は争いの母」という格言もよく口にしますね。「なぜ父ではないのか?」ということで疑問に思わないで下さい。まあそれはさておき、民法の大原則はよくもうしあげている通り「個人主義」です。これは民法というよりも近代法の大原則といった方がいいでしょうね。つまり、個人が個人の自由な意思でその人生を自由に選択できる自由が各個人に保障されなければならない、というキャッチフレーズではじまったのが近代です。そして、現代はその近代の延長上にあり、今なおそのキャッチフレーズは色あせてはいません。この「個人主義」が民法の物権法という分野で顔を出すとき、一つの物には一つの物権しか成立せず、複数の物には一つの物権は成立しない、という形として現れるのです。これを一物一権主義なんていう堅苦しい言葉で表現されることもあります。
 この原則がある以上、民法の物権(ここでは所有権という物権をイメージするとよいでしょう)は、原則として一つの物を一人の人が持つべきだ、ということになるのです。だから、一つの物を複数の物で共有パターンは、民法上の例外として扱われ、なるべく早く共有関係を解消する方向で条文ができあがっているわけです。
 もうおわかりのとおり、このような制度趣旨と背景と原則を有する民法を、現代のマンションにあてはめるととても不都合なことがおきます。マンションも、はたから見れば一つの建物です。まず、これに複数の所有権を設定するということ自体が、民法では許されざることになり、さらには廊下とかエレベータというみんなで使う部分(共用部分)は民法でいうところの共有関係となるので、壊れた場合,建て直しが必要な場合に,共有者全員の同意が必要だ、というわけのわからない状況を生んでしまうのです。ちなみに、民法では上記のとおり個人主義を前提としているので、共同所有者各個人の意思を最大限尊重するので、自分の物に変形を加える場合には、とうぜんにその各人(それを総合すれば全員ということなります)の同意が必要となるわけです。
 さて、長くなりましたが、以上の背景事情をもって生まれたのが建物区分所有法なのです。


2 マンション特有の言葉の意味



3 専有部分と共用部分



4 敷地利用権と敷地権



5 管理組合の管理者と管理組合法人



6 規約



7 集会



8 義務違反者に対する措置



9 復旧および建替え


10 区分所有建物の登記



 講義では,2コマ使用して建物区分所有法をお教えしましたね。建物区分所有法を理解するコツは,民法とどこが違うのか,そしてその違いはどのような理由から生じているのかを,ちゃんと考えて,「こうだから,こうなるんだ」と納得した上で,細かな規定を覚えることです。この過程を経なければ,たいていの場合,建物区分所有法は単なる暗記科目に成り下りその勉強は苦痛以外の何ものでもなくります。こうなった場合は点数につながるはずもありません。
 2〜10の内容は実際の教科書に譲る(細かい条文知識の羅列ですが・・・)こととし,1の内容を理解して先に進むことを心掛けましょう。



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