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権利関係7回目
相続


1 相続とは

 相続とは,自然人の財産上の地位(または権利関係)を,その者の死後に,法律および死亡者の最終意思の効果として,特定の者に承継させることをいいます。この特定の者を相続人と呼びます。法律の規定に基づいて生じる相続を法定相続,死亡者の最終意思に基づくものを遺言による相続といいます。

法律用語解説

被相続人
相続の開始によって承継される財産的地位の従来の主体のこと
相続人
法律によって被相続人の財産上の地位を承継する者のこと
相続財産
被相続人の相続開始時の財産のこと
 相続を理解するポイントは,その流れをしっかりおさえることです。
 被相続人が死亡したら,まず相続人を確定させます。だれが相続人になるかを決めるのです。この段階で,放棄か承認かも決めます。その次に,相続人がどれだけ相続するかという計算をします。これが相続分です。この手続を遺産分割協議といいます。遺産分割協議が終わった後に,土地や建物などの不動産について,登記手続を行うことになります。ちなみにこの登記手続きは単独で行う必要があります。前所有者が既に亡くなっているから,共同で登記手続きにはいけません。


2 相続人

 相続が開始した場合,何よりもまず相続人は誰かを決めなければなりません。ここではそのルールを勉強することにしましょう。
 相続人とその順位は以下のようになります。

配偶者(夫・妻)は,

常に相続人となる

(嫡出子・非嫡出子・養子など)は,常に相続人となる。子が被相続人の死亡以前に死亡していた場合には,その子(孫)が代襲相続する。

子(孫・曾孫(ひまご))がいない場合には,直系尊属(父母や,父母がいなければ祖父母)が相続人となる。

子(孫・曾孫)も直系尊属もいなければ,被相続人の兄弟姉妹が相続人となる。



子がいる場合 子がいない場合
子がいる場合の相続人 子がいない場合の相続人
子も親もいない場合
子も親もいない場合の相続人
非嫡出子がいる場合
非嫡出子がいた場合の相続人
代襲相続
代襲相続の場合の相続人 代襲相続とは,被相続人の死亡以前に被相続人の子が死亡していた等の場合に,被相続人の孫などが代わりに相続することをいいます。この代襲相続は,被相続人の子等が,被相続人を殺すなどして相続欠格者であるときや,被相続人を虐待するなどして排除され,相続権を失ったときにも,認められます。これは,相続権を失った者が相続していたら自らもそれを承継しえたであろうという,直系卑属の期待利益を保護する公平の原理に基づく制度です。


3 相続分

相続分とは,数人の相続人が共同で遺産を承継する場合の,各相続人の承継する割合をいいます。
相続人となることができるのは,配偶者,子,直系尊属,兄弟姉妹であることを学びましたが,これらの者が相続人となるとき,具体的に誰がどれだけの財産を相続するのでしょうか。

相続人

相続分

注意事項

1.配偶者と子が相続人の場合

配偶者=2分の1

子=2分の1

@     子(養子も含む)の相続分は平等

A     ただし,非嫡出子は嫡出子の2分の1

2.配偶者と直系尊属が相続人の場合

配偶者=3分の2

直系尊属=3分の1

直系尊属の相続分は平等

3.配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合

配偶者=4分の3

兄弟姉妹=4分の1

兄弟姉妹の相続分は平等

 なお,相続が開始してから遺産分割が行われるまでは,遺産は共同相続人(数人の相続人)の共有であり,各共同相続人は共有持分として相続分を持っています。そして,持分である以上,各相続人は自己の相続分を自由に譲渡することができます(民法905条)。


4 相続の承認・放棄

 相続財産は土地やお金といったプラスの財産だけとは限りません。場合によっては借金などマイナスの財産の方が多い場合も十分ありえます。
 そこで,相続人は,相続するか(承認),しないか(放棄)を決めることができます。承認については,相続財産全部について承認をすること(単純承認)も,相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務および遺贈を弁済するという限定付きで承認をすること(限定承認)もできます。ただし,法律関係を複雑にしないため,限定承認は,共同相続人全員が共同して行わなければならないことになっています(民法923条)。
 この承認・放棄は,相続人が「相続の開始を知った時」から「3ヶ月以内」にしなければなりません(民法915条)。いつまでもこれができるとすると,相続をめぐる法律関係が不安定なままになるからです。
 また,相続の承認・放棄をするには,行為能力を必要とします。さらに,一部についての承認・放棄はできず,包括的になされなければなりません。単純承認は不要式行為ですが,放棄と限定承認は一定の手続(家庭裁判所への申述)を必要とし,相続開始後に行わなければなりません。相続開始前にこれを行っても無効となります。
 そして,承認・放棄の取消は,原則としてできないことになっています(民法919条1項)。これを認めると,法律関係が不安定になり,利害を有する者が迷惑するからです。ただし,民法の意思表示に関する規定に基づいて,無効や取消(詐欺・強迫など)を主張することはできます(民法919条2項)。

(1)単純承認

 単純承認とは,相続人が,被相続人の権利義務を全面的に承継することを内容として相続を承認することをいいます(920条)。相続人が単純承認をすることを積極的に意思表示する場合はもちろんのこと,一般的には,法定の事由を満たすことによって単純承認したものとみなされることになります(法定単純承認,921条)。
 そして,相続人が単純承認をしたときは,無限に被相続人の権利義務を承継します(920条)。

(2)限定承認

 甲は,妻乙および子A・Bをのこし死亡し相続が開始した。甲には,2,000万円相当の不動産と,3,000万円の借金があった。このまま相続を承認した場合,トータル1,000万円の借金を相続することになってしまう。相続人乙・A・Bに何かよい方法はないか。
限定承認 限定承認とは,相続人が被相続人の債務および遺贈の弁済を相続財産の限度においてのみなし,自己固有の財産によっては責任を負わない旨を留保して承認することをいいます(922条)。
 法が限定承認を認めた趣旨は,相続人において,相続によって得たプラスの財産の限度でのみ被相続人の債務や遺贈などマイナスの部分を負担するという留保付きで相続を承認することを認め,債務の過大な承継から相続人の利益を守ることにあります。
 限定承認するには,相続人が自己のために相続があったことを知った時から3ヵ月以内に財産目録を調製して,これを家庭裁判所に提出し,限定承認する旨の申述をしなければなりません(924条)。このような方式を要件としたのは,限定承認は第三者の利害に関係するところが大きいからです。相続開始前にこれをしても無効となります。
 相続人が複数あるときは,共同相続人の全員が共同して行わなければなりません(923条)。これは,手続が煩雑になるのを避けるためです。
 限定承認が認められると,相続人は,「相続によって得た財産」の限度においてのみ,被相続人の債務および遺贈を弁済すればよくなります(922条)。

(3)相続放棄

 相続放棄とは,相続人が,3ヶ月以内に,その自由意思によって,一定の手続に従い全面的に遺産の承継を拒否することをいいます。
 この手続は,家庭裁判所に対する放棄の申述によってなされます(938条)。3ヶ月間の熟慮期間中になすこと,相続財産の調査が許されていることは,限定承認と同様ですが,財産目録の調製は必要とされていません(915条・924条)。
 相続開始前の放棄は無効です。相続の状態が確定しない段階では,相続人の利益や意思を反映させようとする相続放棄の趣旨が働かないからです。
 相続放棄がなされた場合は,相続開始時にさかのぼってその効力が生じ,放棄した者は,その相続についてはじめから相続人とならなかったものとみなされます(939条)。
 また,相続放棄がなされた場合は,代襲相続はおこりません。条文上,887条2項は代襲原因を死亡・相続欠格・排除の3つに限っているからです。
 さらに,相続放棄の効力は,登記なくして何人に対してもその効力を生じます。


5 遺言

(1)意義

 もし被相続人が死亡するに際して,何の意思表示もしなければ,民法の相続人・相続分の規定に従って相続が進められます。これまで勉強して通りに事が運ぶということです。
 したがって,法律に定められている相続人と異なる人に法定額と異なる額を相続させたい場合には,その意思を書き残す必要があります。これを「遺言」といいます。特に,遺言によって財産を贈与することを遺贈といいます。
 遺言は,遺言者(遺言をした人)の最終的な自由な意思を尊重し,確保しようとする制度です。したがって,他人の意思が入り込まないように,遺言は,法律が決めた一定の方式によらなければならないことになっています(民法960条)。

(2)遺言の方式

  1. 遺言には停止条件を付けることができます。
     遺言に停止条件が付けられた場合は,遺言をした者が死んだ後で,かつ,停止条件が成就した時に,遺言の効力が生じます。
  2. 制限能力者が遺言をするには,次の決まりがあります。
     未成年者は,満15歳に達しなければ遺言することができない。15歳になった未成年者は法定代理人の同意がなくても遺言できるということです。
     成年被後見人は,事理を弁識する能力を一時回復したときに,医師2人以上の立会いがあれば,遺言できます。
     被保佐人や被補助人が遺言するには何も制約がない。だから,被保佐人や被補助人は保護者(保佐人や補助人)の同意がなくても遺言できます。
  3. 遺言をするには書面の作成が必要であり,しかも,原則として法律が定めた次の3つのいずれかの方式(遺言書)で行う必要があります。
     ・自筆証書遺言
     遺言をした者が自分で遺言の全文・日付を書き,署名をし押印する方式。
     ・公正証書遺言
     証人2人以上の立ち会いのもとで,公証人が遺言をした者の口述を筆記して,公正証書を作成する方式。
     ・秘密証書遺言
     封印した遺言状を公証人に提出し,遺言をした者・公証人・証人2人以上が,その遺言状に封紙を貼り,署名をし押印する方式。
     なお,次の者は遺言の証人になれません。
     ・推定相続人
     ・推定相続人の配偶者
     ・推定相続人の直系血族
     ・受遺者
     また,遺言を撤回することもできますが,遺言の撤回は口頭ではできず,上の3つのいずれかの方式(遺言書)で行う必要があります。
  4. 公正証書遺言以外の遺言書を保管していた者が,相続の開始を知ったときは,遅滞なく,その遺言書を家庭裁判所に提出して検認の手続きを請求する必要があります
     なお,家庭裁判所の検認の手続きは形式的なものなので,検認の手続きを経ていない遺言書でも,法律上の効力はあります。

遺言の種類とその方法

手続

種類

筆記者

証人または立会人

署名押印

家庭裁判所の検認または確認

通常方式

公正証書遺言

公証人

証人2人以上

本人,証人

(実印)

不要

自筆証書遺言

本人

不要

本人

相続開始を知った後遅延なく検認

秘密証書遺言

自筆でなくてもよい

公証人,証人2人以上

本人

公証人

相続開始を知った後遅延なく検認

特別方式

危急時

死亡危急時遺言

証人

証人3人以上

証人

遺言後20日以内に確認後遅延なく検認

船舶危急時遺言

証人

証人2人以上

証人

遅延なく確認・検認

隔離地

伝染病隔離者遺言

自筆でなくてもよい

警察官

証人1人以上

本人・筆記者・証人・立会人

相続開始を知った後遅延なく検認

在船者遺言

 

船長または事務員証人2人以上

本人・筆記者又証人・立会人

相続開始を知った後遅延なく検認

 


6 遺留分

(1)意義

 遺言者は,遺言によって自己の財産を誰にどれだけ受け取らせるかを決めることができるが,これを無制限に認めると,最も身近な配偶者や子などが遺言者の死後に,苦しい生活を強いられる可能性がある。そこで,遺言があっても,兄弟姉妹以外の相続人は,最低限の取り分として,一定額を確保することができることになっています(1028条)。これを遺留分といいます。

相続人

配偶者

直系卑属

直系尊属

単独相続の場合

1/2

1/2

1/3

配偶者との共同相続の場合

 

1/2

1/2


遺留分 具体例を挙げて説明しましょう。まず,Aには妻Bと子C・Dがおり,またAには婚姻関係にないXとの間に認知した非嫡出子のYがいたとしましょう。Aには,600万円の預金のほかに1,400万円の土地がありましたが,Aは土地を法律上相続権のないXのために遺贈することを思いつき,その旨の遺言を残して死亡しました。Aの死亡により相続人となるのは,B・C・DとYの4人です。その遺留分は,1028条2号の場合にあたりますから,被相続人の財産の2分の1,つまり相続財産の2,000万円の2分の1にあたる1,000万円です。そして,各人の遺留分は1044条によって900条の規定が準用されていますので,これに従ってなされることになります。900条1号により,妻Bの遺留分は1,000万円の2分の1である500万円となり,残りの500万円を3人の子に配分します。900条4号により,非嫡出子Yについては嫡出子の2分の1ですから,C・Dはそれぞれ200万円,Yは100万円の遺留分を受けることになります。
 ここで,相続人の手元に残っている財産は600万円の預金です。これを法定相続分に応じて配分すると,Bに300万円,C・Dはそれぞれ120万円,Yは60万円となります。したがって,Xへの遺贈により,Bは500万円−300万円=200万円,C・D・Yも同様に計算すると,それぞれ,80万円,80万円,40万円分,遺留分が侵害されていることになります。そこで,各相続人は自己の遺留分が侵害されている限度で,Xに対し遺留分減殺請求権を行使することができます。減殺請求権を行使されたXは,現物で返還するのが原則となります。そうなると,土地を減殺された場合,土地はXと遺留分の割合に応じた相続人らとの共有ということになります。もっとも,いろいろと不都合も生じるでしょうから,Xは価値の返還によって土地の返還を免れることもできます。

(2)遺留分減殺請求権(1031条)

 遺留分権利者は,遺留分を保全するのに必要な限度で遺贈等の減殺を請求することができます(遺留分減殺請求)。この行使は意思表示のみで足り,訴えによる必要はありません。
 遺留分を侵害する遺言は,当然には無効になりません。
 相続放棄と異なり(915条1項),相続開始前でも家庭裁判所の許可を得れば遺留分の放棄ができます(1043条1項)。相続開始後であれば,家庭裁判所の許可などは要りません。
 また,共同相続人の1人のした遺留分の放棄は,他の共同相続人の遺留分に影響を及ぼしません(同条2項)。遺留分と相続分は別物であるから,遺留分を放棄しても相続権がなくなるわけではないことに注意しましょう。
 遺留分減殺請求権には,短期消滅時効が定められています(1042条)。相続の開始および減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間となっています。
 また,減殺すべき贈与や遺贈の存在を知らずにいた場合でも,相続開始時から10年経過することにより遺留分減殺請求権は消滅します(1042条後段)。


 相続に関する問題は,宅建試験では毎年1問必ず出題されています。近年の傾向としては,遺言や遺留分についての細かな知識まで出題されているので,対策は立てづらいが,最低限過去に出題された事項はしっかりと学んでおきたいところです。
 相続を理解するコツは,民法の大原則である,私的自治の原則から考えて,遺言と法定相続のどちらが原則なのかをしっかりと頭で理解することです。この理解があれば,遺留分などについての細かな制度の意味がわかります。むやみやたらな暗記は,今の試験制度においては百害あって一利なしです。しっかり理解した上で暗記しましょう。



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