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権利関係6回目
危険負担・弁済・売主の担保責任


1 危険負担

 Aはその所有する建物についてBと売買契約を結んだ。代金の支払いと,建物の引渡は1ヶ月後に行う予定だった。しかし,不運なことに,契約の次の日,大地震が起きて,建物は全壊してしまった。さて,この場合,この契約はどうなるのでしょうか。
危険負担1 危険負担とは,双務契約において,各債務が完全に履行される前に,一方の債務が債務者の責めに帰すべからざる理由によって履行不能となり消滅した場合に,他方の債務もまた消滅するかという問題をいいます。
 そして,この場合で,他方の債務も消滅する考え方を債務者主義といいます(536条1項)。先に消滅した債務の債務者が危険を負担することになるので債務者主義といいます。危険負担で,債権者・債務者という場合は,消滅した債務についての債権者・債務者を指していることに注意しましょう。債務者主義を採ったということは,双務契約における存続上の牽連性を肯定したともいいます。


 Aはその所有する建物についてBと契約期間2年間の賃貸借契約を結んだ。入居は1ヶ月後に行う予定だった。しかし,不運なことに,契約の次の日,大地震が起きて,建物は全壊してしまった。さて,この場合,Bは2年間賃料を支払い続けなければならないのでしょうか。
 危険負担の問題では,債務者主義が原則になります。危険負担2
 例外として,@特定物に関する,A物権の設定または移転を目的とする,B双務契約の場合は,例外として債権者主義(534条1項)が採用されています。
 ですから,本件の場合,特定物であり,双務契約だけれども,物権の設定・移転を目的としていないので,債権者主義は適用されません。したがって,建物引渡債権が消滅すると同時に,賃料支払債権も消滅します。
 ただ,賃貸借契約の場合は,特別の規定があることに注意しましょう(民法611条)。


 AはBに対して輸入米1トンの売却する契約を締結した。Aは倉庫に保管されているA所有の輸入米の一部を引き渡す予定だった。しかし,契約締結後のある日,買主のBは倉庫を見学した。その際,あろうことかBはタバコの不始末で,倉庫は全焼し,倉庫内の輸入米はおいしそうなお煎餅となった。この場合の処理は?
危険負担3 不特定物債権や特定物賃貸借などのように原則として債務者主義となる場合であっても,債権者の責めに帰すべき事由による目的物の滅失の場合には,債権者主義になります(536条2項)。
 つまり,本件の場合,Bの代金支払債務は消滅しません。ちゃんと代金を支払わなければならないということです。


 Aは所有する自動車をBに売却する契約を締結した。約束の日に,Aはその自動車を運転し,Bの自宅に赴いた。しかし,Bはまだ駐車場が見つからないという理由で,受領を拒んだ(受領遅滞)。しかたなく,Aはその自動車で引き返した。しかし,その途中で,Aは交通事故を起こし,自動車は滅失してしまった。この場合,Bは自動車の代金をAに支払う必要があるでしょうか。
危険負担3 債権者による受領遅滞後に債務者の故意・重過失なく滅失した場合も危険負担の問題となり,債権者主義によって処理されます。というのは,受領を拒絶した債権者に損害を負担させることが公平だからです。
 本件の交通事故について,Aに重大な過失がなかった場合は,AのBに対する代金支払債権は消滅しないということです。つまり,Bはちゃんと代金を支払わなければならないということになります。


2 弁済

(1)定義

 弁済とは,債務者がその内容である給付を実現して債権者の利益を充足させる行為をいいます。これによって,債権はその目的を達成して消滅します。
 たとえば,売買代金を支払うことなどがそれにあたる。この場合は,売主の代金支払債権は弁済によって消滅したという。

(2)第三者弁済(474条)

 本来,弁済は債務者がしなければなりません。しかし,債務者以外の第三者が弁済することもあります。これを第三者弁済といいます。たとえば,第三者が代わりに代金を支払うなどです。
 ただ,第三者弁済は原則として許されていますが,例外として次の3つの場合には認められません。

  @債務の性質がこれを許さないとき(474条1項但書)

第三者弁済の例外,性質上の制限 あなたが,有名な画家に自画像の作成を依頼したとしましょう。報酬は300万円です。しかし,その画家は調子が乗らないといってなかなか描いてくれない。見るに見かねた弟子の一人があなたの自画像を描いてしまった。あなたはこれを弁済として納得できますか。
 これは納得いかないでしょう。このような債務は性質上第三者による弁済ができません。

  A当事者が反対の意思を表示したとき(474条1項但書)

 ここでいう当事者とは,債権者と債務者です。たとえば,債権者と債務者との間で,この契約は第三者弁済は許さないという特約をしたような場合がこれにあたります。

  B利害関係のない第三者の弁済が債務者の意思に反するとき(474条2項)

 BがAからお金を借りていた。しかし,Bの商売はうまく行かず,返すあてもなかった。それにもかかわらず,Bは自分でつくった借金は自分で必ず返すと言い張っていた。Bの父親であるCはその窮状を見かねて,Bの借金を返してしまった。この父Cの弁済は有効なのでしょうか。
第三者弁済,債務者の意思に反する場合 債務者が,「あくまでも自分で借りた金は自分の力だけで返すんだ。」と思っているときに,利害関係のない第三者がお節介で第三者弁済することは認められません。
 利害関係のある第三者とは,債務の弁済につき法的利害関係を有する者をいいます。法的にというところがポイントです。ですから,たんに友人だとか家族だとかでは法的利害関係があるとはいいません。物上保証人や抵当不動産の第三取得者などが,ここでいう法的利害関係を有する者にあたります。
 このような法的利害関係人は,債務者が弁済できないときに,抵当権を実行されたり,請求されたりしてしまう立場にある人です。だから,債務者の意思に反しても第三者弁済ができるのです。
 本件のCは法的利害関係人とはいえません。


《弁済による代位》(499条以下)
 Bは長年続けたサラリーマン生活に終わりを告げて,日本橋で小さな居酒屋を経営することを決意した。そこで,初期投資と運転資金としてA銀行から2,000万円の融資を受けようと考えた。しかし,当然だが,ただでは銀行はお金を貸してくれない。Bの自宅(調布市内の100uの土地)に一番抵当権を設定することと保証人1人付けることを条件に融資する旨を提示された。身内に保証人のなり手のいなかったBは,C損害保険会社に手数料を支払い保証人となってもらった。もともと商才のなかったBは,商売に失敗し返済が滞った。保証人となっていたC損害保険会社は,保証人としてBの代わりにA銀行へ2,000万円を弁済した。C損害保険会社はこの後何ができるでしょうか。
 第三者弁済と法定代位弁済が最終的な債務者でない者によって行われた場合,債務者について消滅した債権者の権利が求償権の範囲で,その弁済に移転する制度のことを弁済による代位といいます。
 この弁済による代位は,第三者弁済に限らず,保証人などによる弁済についも生じます。
 理屈はこうです。
 保証人Cはあくまでも債務者Bの「代わりに」弁済したに過ぎません。Cは保証人であり債務者ではないからです。Cは単に立替払いをしたというイメージをもつといいでしょう。ですから,Cは当然,本来弁済しなければならない義務をもっている債務者Bに,立替払いした金額を請求します。これを求償権といいます。
 しかし,実はここで大きな問題が生じます。まだ勉強していないことですが,抵当権や保証人などの担保はあくまでも主債務者あっての存在だということです。「親がめ子がめ」の関係なのです。つまり,保証人Cが債権者Aに弁済すれば,主債務は消滅します。主債務が消滅すれば,それを担保していた抵当権も消滅するのが筋なのです。
 しかし,そもそも,Bは借金が返せないから保証人Cが立替払いしたのです。いくらCに求償権があるといっても現実にはBからお金を回収することは不可能です。これではあまりにCが忍びないことになります。
 そこで,法は,このようなCに法定代位という権限を与えました。つまり,CのBに対する求償権を確保するため,債権者Aが債務者Bに有していた債権を消滅させずにするというテクニックです。主債務が消滅しなければ,それを担保していた抵当権も消滅しません。
 簡単にいえば,CはAの有していた抵当権を実行できる立場に立つということです。逆にいえば,このような制度があるからこそ,Cのような損害保険会社が成り立っているのです。狙いはBの土地だったのです。「蛇の道は蛇」ってことです。

《弁済による代位の要件》
  1.弁済その他債権者を満足させる行為を行うこと
  2.弁済者が求償権を有すること
  3.弁済につき正当な利益があるか債権者の同意があること
 弁済をなすについて正当な利益を有する者は,その弁済によって当然に債権者に代位します。これを法定代位といいます(500条)。たとえば,保証人や物上保証人のように,自分が代位弁済をしないと強制執行されたり,または自らの不動産を奪われたりして法的な不利益をこうむる者をいいます。
 ちなみに,弁済をなすにつき正当な利益を有しない者は,債権者の同意(承諾)がなければ弁済による代位はできません。これを任意代位と呼びます(499条)。

《弁済による代位の効果》
 弁済による代位によって,弁済者は自分がもっている求償権の範囲内において代位されるべき債権および担保権をすべて取得し,その債権者および担保権者として一切の権利を行使することができます(501条本文)。担保権は人的担保,物的担保のすべてを含みます。


(3)債権の準占有者に対する弁済

 BはA銀行に普通口座をもっていた。その口座には100万円の預金があった。Bは営業の途中パチンコ屋に行った。パチンコに熱中したBは,A銀行の通帳と銀行印の入ったバックが盗まれているのを気付かず,数時間,フィーバーを楽しんでいた。そろそろ会社に戻とうかと思ったとき,バックがなくなっていることに気が付き,急いでA銀行に問い合わせ,最寄の警察署に届け出た。しかし,遅かった。Bの預金はすでに全額引き出されていた。BはA銀行から100万円の預金を引き出すことができるでしょうか。
債権の準占有者に対する弁済 債務の弁済は,債権者に対してなすのが原則です。債権者以外の第三者に対して弁済しても弁済は無効なのが原則です。ただ,債権者以外の者に弁済しても有効となる場合があります。それが準占有者に対する弁済であり,民法478条に規定があります。
 債権の準占有者という言葉は耳慣れない言葉ですが,債権者らしいふりをしている人,債権者らしい外見を持っている人のことを準占有者といいます。たとえば,本件のCのように通帳と印鑑を持ってまさに債権者らしいふりをしている人などが準占有者ということになります。
 このように債権者らしき者に対して善意・無過失で支払ってしまった場合は,債務者であるA銀行はもう払わなくてもよくなります。つまり,免責されるわけです。
 その他,代理人と称した者に対する弁済も債権の準占有者に対する弁済として有効となります(最判昭和37年8月21日)。また,受取証書(領収書)を持参した人に弁済する場合も同様に考えます。
 この制度の趣旨は,公信の原則に基づき弁済者を保護することです。


(4)代物弁済

代物弁済 代物弁済とは,本来の給付と異なる他の給付を現実になすことによって債権を消滅させる,債権者・債務者間の契約をいいます(482条)。この代物弁済契約は,有償契約であり,要物契約であると解されています。
 その要件は,@債権の存在,A本来の給付と異なる他の給付をなすこと,B給付が弁済に代えてなされること,C債権者の承諾があること,です。
 その効果は,有効な代物弁済がなされると債権は消滅します。ただ,要物契約なので,目的物を引渡して対抗要件を備えさせなければ債権は消滅しません。


3 売主の担保責任

(1)はじめに

 担保責任とは,売買の目的物に権利の瑕疵や物の瑕疵がある場合に,売主が負う責任のことをいいます。これは有償契約における等価的均衡を保つための制度です。
 Aは100万円の価値ある自動車をBから購入した。しかし,その自動車には欠陥があった。買った当初は気づかなかったが,エンジンの内部に問題があった。これを直すには10万円程度の工事費がかかる。つまり,90万円相当の価値しかなかった。この場合,AとBとの間の均衡を保つためにはどのような方法があるか。
 このような場合,3つの方法が考えられます。
 第一に,AがBに対して10万円の賠償金の支払いを要求する方法(損害賠償)。
 第二に,代金100万円を90万円にまけてもらうこと(代金減額請求)。
 第三に,契約自体をなかったことにしてしまうこと(契約の解除)。
 民法はこの3つすべてを担保責任の場面で認めているわけではありません,これらのいずれかの組み合わせが,民法561条から570までに規定されています。

(2)他人物売買(561条)

 AはB所有の土地をCに売った。Aはその後Bからその土地を購入する手はずだったが,いくら交渉してもBは土地を手放してくれなかった。このような場合,CはAに対して何が言えるでしょうか。
 このような場合,Aは他人物の売主として担保責任を負います。
 つまり,買主は善意・悪意を問わず契約の解除ができます。ただ,損害賠償請求は善意の買主についてのみ認められます。
 ちなみに,買主Cは売主Aに対して履行不能を理由に損害賠償請求もできます(415条)。ただ,履行不能に基づく損害賠償請求の場合は,売主に帰責性がなければなりません。また,この場合は,売主の善意・悪意は問われません。
 なお,他人物売買の売主の担保責任は,期間制限はありません。

(3)一部他人物売買(563条・564条)

 AとBは10年間の婚姻生活にピリオドをうった。AとBは婚姻生活中に二人で購入して共有財産となっている土地付き建物があった。その不動産は登記簿上も2分の1ずつの共同所有となっていた。Aは後にBとの話し合いでこの不動産の全部を手に入れることができるだろうと予測を立て,その旨を友人のCに伝え,不動産の全部をCに売却した(不動産の50%はB所有のままなので一部他人物となる)。その後,AとBとの間の財産分与の協議は難航し,結局AはBから不動産の全部を手に入れることができなかった。CはAに対して何が言えるでしょうか。
 このような場合を,一部他人物売買といいます。買主Cは,売主Aに対して,善意・悪意を問わず代金減額請求ができます。さらに,善意の買主は,契約の解除と損害賠償の請求が認められています。
 一部他人物売買の担保責任は,権利関係の早期安定という趣旨から,善意の買主は売主が権利を移転することができないという事実を知った時から1年以内に行使しなければならないことになっています。悪意の買主は契約のときから1年以内に行使しなければなりません。

(4)数量不足・物の一部滅失(565条)

 Aは所有する不動産を,1坪100万円で,100坪(1億円)をBに売却する契約を締結した。しかし,購入したBが実際にその土地を測ってみると,99坪しかなかった。BはAに対して何が言えるでしょうか。
 このような売買を,数量指示売買といいます。数量指示売買とは,一定の面積・容積・員数または尺度があることを売主が契約において表示し,かつ,この数量を基礎として代金額が定められた売買のことをいいます。
 このような場合,善意の買主だけに代金減額請求と解除と損害賠償請求が認められています。
 これらの請求は,権利移転することができないという事実を知った時から1年以内に行使しなければなりません。

(5)目的物に他人の権利が付着している場合(566条)

 Bは建物を建てる目的で,Aから土地を購入した。しかし,その土地には登記された地上権が設定されており,Bは建物を建てることができなかった。BはAに対して何が言えるでしょうか。
 本件のBのように,対抗力ある他人の権利によって,目的物の利用が制限されてしまっている場合の買主を保護するための規定が566条の担保責任です。登記された賃借権がある場合も同様です(566条2項)。
 このような場合,善意の買主のみ,解除と損害賠償が認められています(解除は契約の目的が達成できないときに限るという制限があります)。なお,買主はその事実を知った時から1年以内に権利を行使しなければなりません。

  BはAから土地を購入した。しかし,その土地にはCの抵当権が設定されていた。この抵当権が実行されてしまったため,Bはこの土地を奪われた。BはAに対して何が言えるでしょか。
 このような場合,買主は善意・悪意を問わず,解除と損害賠償の請求ができます。なぜなら,抵当権を存在を知っていても,売主などが債務を弁済し,抵当権を消滅させてくれるだろうと期待して,譲り受ける者もいるからです。

(6)瑕疵担保責任(570条)

 BはAから建物を購入した。しかし,その建物には契約当初からシロアリに食われており,Bがそれに気付いたときには,すでに居住することが不可能なまでに腐朽していた。BはAに対して何が言えるでしょうか。

 目的物に隠れた瑕疵があった場合の売主保護の規定が570条です。隠れたとは,取引上要求される一般的な注意では発見できないことをいいます。つまり,買主が瑕疵について善意・無過失だということです。瑕疵とは,取引通念上から見て,売買の目的物に何らかの欠陥があることをいいます。言い換えれば,目的物が通常の品質や性能を有していないことを言います。
 善意・無過失の買主は,損害賠償請求と解除ができます(解除の場合は目的不達成という要件もクリアーしなければなりません)。

《法律上の瑕疵》

 BはAから建物を建てる目的で土地を購入した。しかし,その土地は都市計画事業上の道路敷地にあたっていて,建物を建てられない場所だった。BはAに対して,瑕疵担保責任を追及できるか。
 瑕疵担保責任における瑕疵には,物理的な瑕疵のみならず,法律的瑕疵も含まれるとするのが判例です。
 したがって,本件のBはAに対して瑕疵担保責任を追及できます。


 危険負担,弁済,売主の担保責任,本日扱ったテーマは多岐にわたりますが,民法財産法を理解するには避けては通れません。
 出題頻度からいえば,危険負担は10年に1回程度しか出題されません。ただ,危険負担の理解は,債務不履行と売主の担保責任の理解の助けとなるので,基本的な概念は理解しておきましょう。
 弁済については,宅建試験では,第三者弁済の効力,第三者に対する弁済の効力,弁済による代位の3つが最重要項目となります。
 売主の担保責任は,2年に1回程度出題があるので,最重要項目のひとつといえます。また,瑕疵担保責任については,宅建業法上の自ら売主制限における頻出事項とも重なるので,細かい制度もしっかりとおさえておきましょう。


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