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権利関係8回目
物権変動
1 物権変動とは
物権変動とは,所有権などの物権が契約その他の原因によって発生,移転,消滅することをいいます。
発生には,建物の新築,売買や相続,時効などによって取得することなどがあります。
変更とは,物権の内容を変更することをいいます。たとえば,地上権の存続期間を延長するとか,一番抵当権を二番抵当権に変更するなどです。
消滅には,目的物の消滅,放棄,消滅時効,契約の取消・解除などがあります。
2 所有権の移転時期
契約の時に所有権が移転するというのが,通説・判例です。ただ,逆に言えば,当事者の意思表示のみで所有権が移転するのであるから,当事者どうしで,「契約書にサインしたときに所有権を移転しましょう」とか「移転登記したときに所有権を移転しましょう」とか「代金を完済したときに所有権を移転しましょう」というように,別に所有権の移転時期について当事者の意思表示があった場合は,そちらが優先することになるともいえます。また,このことは私的自治の原則・契約自由の原則から言えることでもあります。
したがって,当事者間で特に取り決めをしなかった場合に,民法176条を適用し,意思表示のみが物権変動の要件だということになるのです。
3 対抗問題
| あなたは友人から建物を購入しました。しかし,まだ契約書を交わしただけで,名義変更(移転登記)も,引越しも済んでいませんでした。念願のマイホームを手にしたあなたは,来月の引越しを前に,契約のときに一度だけ見た建物をもう一度見に行った。なんと,そこには既に人が住んでいた。あなたはその人を追い出すことができるでしょうか。 |
対抗要件とは,取得した所有権等の物権を第三者に主張するための要件をいいます。つまり,上の例であなたが売主である友人以外の第三者に,所有権などの物権を主張するための要件ということです。
自分が所有者になったら,自分が所有者だということを売主以外の人に主張するためには対抗要件という一定の要件をを満たさないと,自分が所有者だということを主張できません。具体的には,建物などに居座っている人を追い出すことができません。
登記を対抗要件とする物権は,所有権,地上権,永小作権,先取特権,質権,抵当権です。ただし,一般の先取特権は,不動産につき,登記がなくても特別担保を有しない債権者に対抗できます(336条),また,占有権と留置権は,その性質上登記を必要としませんし,登記できません。
なお,物権ではありませんが,不動産賃借権や買戻し権も登記を対抗要件とする権利とされています。 |
不思議に思われるかもしれませんが,契約を結んだだけでは,契約の相手方にしかその内容を主張できないのです。思い出して下さい。債権は特定の人に対して一定の要求をする権利でした。特定の人にしか契約の内容は主張できないのが原則なのです。
不動産の対抗要件は登記であり,動産の対抗要件は引渡です。
《公示》
| なぜある不動産が自分のものだと第三者に主張するには登記が必要なのか。 |
所有権は見えないため,誰に所有権が帰属するのかを外から見てわかるように公に示す必要があるから。このことを公示といいます。
《公示と取引安全》
不動産は重要な財産なので,その物権変動が対外的に認識できないと,取引の安全という観点から弊害が大きい。そこで,登記という公示手段を対抗要件としているわけである。
簡単に言えば,所有権という権利は,目には見えません。したがって,それを目に見える形にすれば,取引する人にとって安心できるということです。
《不動産の二重譲渡》
| Aが所有する土地つき建物をBに売った。その後,Aは同じ土地建物をCにも売った。Cが先に登記を移転した場合,この土地つき建物は誰のものになるでしょうか。 |
ところで,所有権移転時期が契約成立時であると学びました。それならば,AB間で既に契約が結ばれているのですから,AはCと契約を結ぶ際には,不動産の所有権をもっていないことになります。このようなAを無権利者といいます。もちろん,民法上は他人の物でも自由に売ることはできます。民法上は他人物売買も有効です。引き渡す債務が発生するだけです。しかし,AがBに当該不動産を引き渡す義務が発生するということとCが確定的に所有権を取得することは次元の異なる話しでなのです。
3 登記を対抗要件とする物権変動
(1)取消と登記
| AとBが土地付き建物の売買契約を結び,B名義の移転登記も完了している。しかし,その契約はBの詐欺による契約だった。Aは詐欺に気付きすぐにBとの売買契約を取り消した。しかし登記名義はまだBのままだった。Bは自分が名義人であることをいいことに,その土地をCに売ってしまった。さて,この場合,この土地付き建物はAの物になるのか,Cの物になるのか。 |
これは取消と登記の問題です。とても重要です。
取消後の第三者が保護されるためには,民法177条の登記を備えなければならない,というのが判例の立場です。これは復帰的物権変動という考え方を使います。法的にはAが詐欺や強迫などを理由にAB間の契約を取り消せば,AB間の売買契約ははじめからなかったことになります。つまり,一度たりとも土地つき建物はBのものにはなっていなかったということになります。であるならば,Cは何の権利も持たないBからAの土地付き建物を購入したということになります。これは他人物売買になります。原則としてCはAの土地付き建物の所有権を取得することはありません。しかし,判例は,いったんBのところに移転した所有権が,取消を機に,Aのところに戻った(復帰した)と考えるのです。そうすると,BがAとCに二重売買したような形ができあがるわけです。似ているならば,二重売買の解決方法である177条の早い者勝ちの理論を使ってしまえ,というわけです。
ちなみに,この理屈は,詐欺に限らず,強迫や制限能力者を理由とする取消の場合にも適用されます。取消前の第三者は,意思表示のところで既に勉強しています。
(2)解除と登記
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AとBが土地付き建物の売買契約を結び,B名義の移転登記も完了している。しかし,Bは約束通りの代金を払ってくれない。そこでAはやむなく契約を解除した。しかし,登記名義はまだBのままだった。Bは自分が名義人であることをいいことに,その土地をCに売ってしまった。さて,この場合,この土地付き建物はAの物になるのか,Cの物になるのか。 |
これは解除と登記という問題です。解除に現れた第三者は,取消後の第三者と同じく,177条で解決します。復帰的物権変動という理屈を使います。つまり,AとCの関係は対抗関係になり,先に自分名義の登記を取得した方が,完全な所有者になります。
ちなみに,解除前の第三者の場合は,民法545条1項但書によって保護されます。この場合は,対抗関係ではないのですが,判例は第三者が保護されるための要件(要保護性)として登記を要求しています。
(3)取得時効と登記
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BはAの息子(無権代理人)と,Aの土地付き建物の売買契約を結んだ。ただ,登記は息子の策略でA名義のままだった。A本人はBと賃貸借契約を結んでいるつもりでいた。そのような状態が10年間続いていた。Aは,この土地付き建物を,Cに売った。登記はまだAのままである。その後,BはAの息子が無権代理人であることに気付いた。さて,このような場合,この土地付き建物は,Cの物になるのでしょうか,Bの物になるのでしょうか。 |
これは,取得時効と登記という問題です。時効による所有権の取得を第三者に対抗するためには,登記が必要かという問題です。
この問題を考える際には,次の判例の5命題をしっかり頭に入れる必要があります。
- 時効取得した者Bと時効取得された元所有者Aは物権変動の当事者類似の関係になるので,BはAに対して登記がなくても時効取得を主張できる。
- 時効完成前に元所有者Aから不動産を譲り受けたCは時効取得者Bとは当事者類似の関係になるので,BはCに対して登記がなくても時効取得を主張できる。
- 時効完成後に元所有者Aから不動産を譲り受けたCは,時効取得者Bとは対抗関係になり,BはCに対して登記がなければ時効取得を主張できない。
- 時効の起算点(スタート時点)は変えることができない。
- Bの時効完成後にCが登記を備えたため,Bが時効取得を主張できなくなった後,さらにBが時効取得に必要な期間占有を継続した場合には,新たに時効が完成し,BとCは当事者類似の関係になるので,BはCに対して登記がなくても時効取得を主張できる。
4 登記をしなければ対抗できない第三者
ここからは,少し難しい話をしましょう。法律学には,法律の条文の言葉の解釈として,学説や判例で言い争いがあることは授業の中で何度か紹介しました。この民法177条でも,学説上の争いがあります。また,理論上非常に重要な点を含んでいるので,今はわからなくても,民法を最後まで勉強した上で振り返り深く学んでほしい。
民法177条に定められている「第三者」とは誰をいうのか,という点で議論があります。
この点,最高裁判所は,第三者とは,当事者及びその包括承継人(相続人・包括受遺者)以外の者で登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいい,善意悪意を問わないが,背信的悪意者は除かれる,と判断しています。
法律上は,単に「第三者」とだけ書かれているので,原則として当事者以外のすべての者となるが,それでは範囲があまりにも広がりすぎるので,「登記の欠缺を主張する正当な利益を有する…」という形で絞りをかけているのです。原則は当事者以外のすべて,例外として正当利益を有しない者ということです。つまり,覚える方は,正当利益を有しない者を優先して覚えるべきでしょう。なぜなら,それ以外はすべて「第三者」にあたるからです。
では,第三者にあたらない者の代表例は誰でしょうか。
まず,無権利者です。前に勉強した94条の虚偽表示などで名義だけが自分のものになっている人などがその例です。このような架空名義人に対しては,登記がなくても所有権などの物権を主張することができます。
つぎに,不法行為者や不法占拠者などです。勝手に家や土地に居座っている者などがその例です。このような人に対しても,登記なくして所有権などの物権を主張できます。
最後に,背信的悪意者です。ちなみに,悪意者はここには入りません。この点について,次に詳しくみてみましょう。
(1)悪意の第三者と177条
| AはBに不動産を売った。Aは売買契約に基づいてBに不動産を引き渡し登記を移転しなければならない。しかし,AはCにそれを売ってC名義に移転登記してしまった。さらに,あろうことか,CはAB間での売買契約の事実を知っていた。つまり,CはBが土地建物を手に入れられなくなくことを承知の上で,Aから購入したのです。さて,この場合,Cはこの土地建物の所有者になることができるのでしょうか。 |
土地と建物の所有者であるAが,それをまずBに売り渡した。普通ならこの段階で,AとBが登記所に足を運び,AからBへの所有権移転登記を行って,同時に代金を支払う。一件落着,なのでしょうが,世の中はきれい事だけではすまされない面も多々ある。お金に困った人や犯罪を商売にする人も少なからずいる。もし,Aがそのような人だった場合問題が起きる。
この点,判例・通説は,悪意の譲受人も177条の「第三者」にあたるとしている。つまり,上の例で,Cは所有権をBに対し主張できることになります。
なぜでしょうか。それは,資本主義社会における自由競争と,登記と実体の一致の要請からと言われています。
(2)背信的悪意者排除論
| Aは自己所有の不動産をBに売った。ところがその後,Bに恨みをもっているCが,Bを困らせるだけの目的で,Aを積極的に唆し売買契約を結んだ上で,自己名義にした。この場合,Bは登記なくしてCに所有権を主張できるでしょうか。 |
このようなCを背信的悪意者といいます。変な名前ですが,最高裁判所が単なる悪意者と区別するために命名した名前です。
どのような人が背信的悪意者となるのでしょうか。
それは,自由競争の範囲を逸脱するような第三者がそれにあたることになります。その例として,不動産登記法5条に定められています。
不動産登記法5条
- 詐欺又は強迫によって登記の申請を妨げた第三者は,その登記がないことを主張することができない。
- 他人のために登記を申請する義務を負う第三者は,その登記がないことを主張することができない。ただし,その登記の登記原因(登記の原因となる事実又は法律行為をいう。以下同じ。)が自己の登記の登記原因の後に生じたときは,この限りでない。
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物権変動は,過去10年で7回程度出題されているとても重要なところです。とくに,取消・解除・時効・相続とのからみと,意思表示における取消との違いを理解しているのかを問う問題が多いです。
所有権移転の効果と,第三者対抗要件のところは,初学者にとっては理解しにくいところですので,理解できなくても先に進む勇気も必要となるでしょう。このようなところはある程度勉強が進んだ後に,もう一度勉強すると理解できます。
背信的悪意者の知識は,宅建試験では丸々1問出題される可能性もある重要なところです。ただ,理解に苦しむ内容ではなく,暗記もし易いし,内容から一度暗記したら忘れないものでしょう。ぜひ確実に1点ゲットできるようにしたいところです。 |
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