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法律入門講座
刑 法



2006年度の刑法入門講座は,清水卓先生が担当しております。


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1 科目の概要

 刑法とは犯罪と刑罰について規定している法律です。新聞やテレビなどでこの犯罪について報道していないときはないくらい,ある意味メジャーなできごとです。ですから,法学部に入って学ぶ法律の中で,一番とっつきやすい科目だと思います。しかし,勉強をはじめて一番難解な理論に出会う科目でもあります。さらに,一番初めにマスターする科目でもあります。
 刑法の中で使われる用語には難解なものが多い。
 なぜでしょうか。
 私たちの国の法律は,そのほとんどが明治時代にヨーロッパから輸入されました。その当時,先に近代革命を成し遂げた列強諸国からの圧力と侵略が今から100年ほど前の日本に差し迫っていました。そのなかでいち早く近代的な政治体制を日本に打ち立てる必要があったのです。しなければ植民地化されるおそれがあったのです。ヨーロッパ先進諸国のようにゆっくりと市民革命などやっている暇がなかったのです。100年ほど前の日本の官僚は,これら列強諸国に追いつき追い越すために,とにかく大急ぎで天皇をシンボルに近代化を成し遂げました。その際,ゆっくりとわが国の事情や歴史に根をもった法律などは作る暇はなく。はじめはフランス,後にドイツの法律を中心に,翻訳して日本の法律にしてしまったのです。その際,今のようにできのいい独和辞典はありませんでした。したがって,ドイツ法を模範とした日本の刑法は,下手な直訳語のオンパレードとなってしまいました。それが今でも使われています。
 次に,刑法学は,他の法律分野に比べて,学説の対立が激しいという特徴があります。
 なぜだか分かりますか。
 日本で,合法的に(法律違反をせずに)計画殺人を行うことができるのは,刑法を適用した国家権力だけだからです。法律は人の命すら奪うことができるのです。この刑法がときの権力者に悪用されてしまったら,国民の自由は崩壊します。刑法にある刑罰法規はうまく利用すれば,国民の自由を守る正義の剣になります。使い方を誤れば,国民の自由を奪う悪魔になります。このことをよく,刑法は諸刃の刃である,という法格言であらわしたりします。両方切れる刃なので,悪を切ることができる反面,常に自分にも刃が向けられているわけです。
 このような刑法を解釈する学問なのですから,いい加減な解釈であっては決してなりません。人ひとりの命,日本の将来がかかっているわけですから,その解釈上の争いは激烈を極めます。
 しかし,はじめはこのような学説上の争いという不毛の地に足を踏み入れることはせず,判例と通説を中心に全体像をまず理解することが,刑法を早くマスターするコツになります。一通りマスターした上で(できれば資格試験に合格した上で),学説上の争いに足を踏み入れて下さい。
 では,共に刑法の全体像を眺める旅に出よう。

2 講義内容

第1章 刑法総論
 第1節 序論
  1 刑法の機能
   @法益保護機能
   A人権保障機能(自由保障機能)
   Bまとめ
  2 犯罪
   @罪刑法定主義
   A「違法」と「責任非難」
   B構成要件
   Cまとめ
 第2節 犯罪成立要件―構成要件
  1 構成要件要素
  2 客観的構成要件要素
  3 主観的構成要件要素
   @構成要件的故意
   A構成要件的過失
 第3節 犯罪成立要件―違法
  1 違法―違法性の判断
   @違法性阻却事由
   A違法性の本質
   B違法の本質―違法性の客観性
   C違法の本質―結果無価値と行為無価値
   D違法の本質―行為無価値論と法規範違反説
   E違法要素
  2 違法―違法性阻却事由
   @意義
   A正当行為
   B緊急行為
    (1)正当防衛の意義と根拠
    (2)正当防衛の成立要件
    (3)正当防衛の限界
    (4)緊急避難の意義
    (5)緊急避難の成立要件
 第4節 犯罪成立要件―責任
  1 責任論総説
   @責任主義
   A責任の本質
   B責任の要件
  2 責任能力
   @意義
   A心神喪失と心神耗弱
   B刑事未成年者
   C原因において自由な行為
   D原因において自由な行為の理論
  3 責任故意
   @総説
   A責任故意の内容
   B違法性の意識の可能性
   C法律の錯誤
 第5節 修正された構成要件
  1 総説 102
  2 未遂
   @既遂・未遂・予備の意義
   A未遂
   B未遂―中止犯
    (1)中止犯の法的性格
    (2)中止犯の成立要件
   C未遂―不能犯との違い
  3 共犯
   @総説
   A共同正犯
    (1)意義
    (2)趣旨
    (3)要件
    (4)共同正犯の処分
   B教唆犯
    (1)意義
    (2)要件
    (3)教唆犯の処分
   C幇助犯
    (1)意義
    (2)要件
    (3)幇助犯の処分
 第6節 罪数と刑罰

第2章 刑法各論
 第1節 犯罪類型の分類
  1 刑法総論とのかかわり
  2 保護法益による分類
 第2節 個人的法益に対する罪
  1 生命・身体に対する罪
   @ 殺人罪
   A 傷害罪
   B 暴行罪
   C 過失傷害の罪
   D 堕胎の罪
   E 遺棄の罪
    (1)単純遺棄罪
    (2)保護責任者遺棄罪
    (3)遺棄致死傷罪
  2 自由及び私生活の平穏に対する罪
   @ 逮捕・監禁の罪
   A 脅迫・強要の罪
   B 略取及び誘拐の罪
   C 性的自由に対する罪
   D 住居侵入の罪
   E 秘密を侵す罪
    (1)信書開封罪
    (2)秘密漏示罪
  3 名誉・信用に対する罪
   @総説
   A名誉毀損罪
    (1)構成要件要素
    (2)事実証明
   B侮辱罪
   C信用及び業務に対する罪
    (1)信用毀損罪
    (2)業務妨害罪
  4 財産に対する罪
   @総説
    (1)財産罪の分類
    (2)財産罪共通の問題点
   A窃盗罪
    (1)占有の存否に関する問題
    (2)占有の帰属に関する問題
    (3)窃盗行為
    (4)着手時期
    (5)既遂時期
   B親族相盗例
   C強盗罪
    (1)総説
    (2)強盗罪
    (3)強盗利得罪
    (4)事後強盗罪
    (5)昏酔強盗罪
    (6)強盗致死傷罪
    (7)強盗強姦罪
    (8)強盗強姦致死罪
    (9)強盗予備罪
   D詐欺の罪
    (1)総説
    (2)詐欺罪
    (3)詐欺利得罪
    (4)詐欺罪の諸類型
    (5)電子計算機使用詐欺罪
   E恐喝の罪
   F横領の罪
   G背任の罪
   H盗品等に関する罪
   I毀棄・隠匿の罪
 第3節 社会的法益に対する罪
  1 公衆の安全に対する罪
   @騒乱の罪
   A放火及び失火の罪
   B出水・水利に関する罪
   C往来を妨害する罪
   D国民の健康に関する罪
  2 偽造の罪
   @通貨偽造の罪
   A有価証券偽造の罪
   B文書偽造の罪
   C印章偽造の罪
  3 風俗秩序に対する罪
   @わいせつ,姦淫および重婚の罪
   A賭博及び富くじに関する罪
   B礼拝所及び墳墓に関する罪
 第4節 国家的法益に対する罪
  1 国家の存立に対する罪
   @内乱に関する罪
   A外患に関する罪
  2 国家の作用に対する罪
   @公務の執行を妨害する罪
   A逃走の罪
   B犯人蔵匿・証拠隠滅の罪
   C偽証の罪
   D虚偽告訴の罪
   E職権濫用の罪
   F賄賂の罪
  3 国交に関する罪
   @外国国章損壊罪
   A私戦予備・陰謀罪
   B中立命令違反罪





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